近年、プロスポーツ選手の中で睡眠への意識が高まってきています。今回は、スポーツマンが睡眠にこだわるべき理由を心技体の側面から考察しました。体⇒心⇒技の順にご紹介します。
体の理由:身体の調子が整う
肉体の修復・増強には良質な睡眠が不可欠
筋肉の増強のためには、トレーニングで筋肉にダメージを与える→休息中にアミノ酸を与えて回復させる、というプロセスが必要です。そしてトレーニングでダメージを負った筋肉が回復し、さらにアミノ酸を得て増強していくためには、成長ホルモンが不可欠ですが、この成長ホルモンの多くは睡眠中に分泌されます。成長ホルモンは、とりわけ最初の深いノンレム睡眠時に多くが分泌されます。そのため、強い身体を作り上げていくためには、最初の90~120分で深い睡眠を確実にとらなければなりません。また、疲労を回復し、動きやすさがあがれば、ケガの可能性も下がります。
食欲が安定し、体重を管理しやすくなる
スポーツマンにとってトレーニング並みに重要なことといえば食事ですが、この食事と睡眠も関係があります。これは、睡眠負債に関する記事で述べた通り、睡眠不足であればあるほど、食欲を増進させるホルモンであるグレリンの分泌が上昇、食欲を抑制するホルモンであるレプチンの分泌が低下することによって、食欲が増進してしまうのです。もちろん、どんなに食欲があっても、減量中などは我慢すると思いますが、きちんと寝ている方が、食欲が安定し、必要な我慢の度合いも弱まります。
心の理由:精神が安定しやすくなる
睡眠不足は感情のブレーキを弱める
睡眠不足になればなるほど、感情のブレーキが利きづらくなり、起伏が激しくなっていきます。スポーツと関係ない場面でも、寝不足なためにイライラしやすくなったことがあるのではないでしょうか。睡眠不足でミスをすると、そのミスについての後悔や自責の念などが必要以上にネガティブに出るようになってしまい、自己評価の下落やモチベーションの低下などにつながってしまいます。精神を安定させる意味でも、十分な睡眠は不可欠なのです。
集中力も増す
良質な睡眠を十分にとれば、素晴らしい集中力を発揮しやすくなるのは各種実験からも明らかになっています。集中力が高まれば、実戦でよいパフォーマンスを出せる可能性も上がりますし、ミスも減ります。実力を十分に発揮できることで、モチベーションがあがりやすくもなります。
技の理由:技術の習得にも一役
スポーツの技術は手続き記憶
記憶に関する記事の中で、記憶にも、宣言的記憶と非宣言的記憶があり、さらに非宣言的記憶の中でも、手続き記憶と情動記憶に分類されますと紹介しましたが、スポーツの技術はこの手続き記憶にあたります。
手続き記憶こそ寝て定着
これも記憶に関する記事で紹介しましたが、手続き記憶に関しても、睡眠の有用性を示す実験が多いです。それら実験によれば、スポーツの技術等の手続き記憶の定着には、6~8時間程度の睡眠が重要でした。何か新しい技能を習得し、定着させるためには、寝る間を惜しんで練習するより、ゆっくり寝た方がよいのです。したがって、新しい技を習得するチャレンジを開始する際には、練習時間とともに十分な睡眠時間を確保するよう、スケジューリングしましょう。
最後に
以上のように、スポーツの上達や競技の継続にとって、睡眠は心技体のどの側面からも重要です。プロであれアマであれ、何かのスポーツの上達を狙う方は、ぜひ良質な睡眠がとれるよう、行動や環境にこだわってください。当サイトには、寝るための様々なコツも紹介していますので、そちらを参考にしていただければ幸いです。